アーユルヴェーダは「生命の科学」
WHO(世界保健機構)が正式に奨励している代替医療でもあります。
生命とは肉体、感覚、運動器官、精神が一体となったものである。アーユルヴェーダは生命に何が有益で何が不益であるか、幸福な人生と不幸な人生とは何か、何が生命にとって良い結果と悪い結果をもたらすか、何が長命を招き何が短命を招くかを述解する学問である
アーユルヴェーダの目的
- 病気の予防と治療
- 理想的な体質の構築
- 身体組織の質の向上
- 精神の質の向上
西洋医学では、病気の原因は体外の病原体による感染や遺伝子異常などによる生体内の酵素系や代謝系の異常であり、自分に関係ない外的要因に病因を求める傾向にあります。
西洋医学・中医学・アーユルヴェーダにおける「病気」の定義
アーユルヴェーダでは、病気の発症過程を六段階に分けています。病気になる前の体を診断し、異常の原因を取り除くことを重視する予防医学だからです。
現代人で健康な状態にいる人は少なく、ほとんどは未病の状態にいるという統計があります。症状が悪化して初めて病院へ行く人がほとんどでしょう。
西洋医学 | 健康 | 病気 |
中国医学 | 健康 | 未病 | 病気 |
アーユルヴェーダ | 健康 | 蓄積 | 悪化 | 流出 | 定着 | 発症 | 慢性化 |
アーユルヴェーダでは、本人の智慧の過ちの結果、食事や行動様式などの日常生活での不摂が原因となり心身に溜まったアーマ(毒素)が病気を発症させると考えます。
アーユルヴェーダの教えを生活に取り入れることで期待できる効果
- 生活の質の向上に伴う健康維持
- 体質に合う食事により消化力が向上し、巨食、過食の解消
- アーユルヴェーダ的生活習慣による免疫力の向上
- 肉体の健康が精神面にプラスの影響をあたえ、幸福度アップ
アーユルヴェーダは、健康のための養生法がベースになっており誰かに何かをやってもらうという人任せ的なものではなく、自分自身が日々実践していく生き方そのものという考え方を尊重しています。
アーユルヴェーダ的生活習慣を身につけることで、肉体面だけでなく精神面でのバランスも調和するため、心穏やかに日々を過ごすことができるようになります。
アーユルヴェーダは、継続することにより自己の内面に働きかけ、幸福感の増すメソッドでもあります。
日常生活に取り入れるアーユルヴェーダの健康習慣ディナチャリヤ
五大元素(Pancha Maha Bhoota)
アーユルヴェーダを語る上で欠かせないものに五大元素(Pancha Maha Bhoota)と3つの基本的な性質(Tri dosha)があります。
これらは、心身の健康とバランスを理解するための基礎となる概念です。
アーユルヴェーダでは、宇宙や人体を構成する基本的な要素として以下の五大元素が挙げられます。
空(Akasha/Space)
空間や広がりを象徴し、他の元素を包含する要素です。
風(Vayu/Air)
動きや変化を象徴し、呼吸や循環、運動を司る要素です。
火(Agni/Fire)
熱や光、代謝を象徴し、消化や変容の力を持つ要素です。
水(Jala/Water)
流動性や結合力を象徴し、体液や潤いを提供する要素です。
土(Bhoomi/Earth)
固定性や安定性を象徴し、身体の構造や形を提供する要素です。
世界のあらゆるもの(生物、無生物)は、この5つの要素から出来ていると言われています。
3つの基本的な性質(Tri dosha)
五大元素が組み合わさって形成される3つの基本的なエネルギーがトリドーシャです。
これらはそれぞれの個体の体質や気質を決定し、心身のバランスを保つために重要な役割を果たします誰もがこの3つの性質を持ち合わせていますが、どの性質を一番多く持っているかで基本性質であるドーシャが決定します。ドーシャは、季節や時間帯、年齢、環境によっても変化します。
Vata/ヴァータ | 風のエネルギー | 冷、軽、動、速 | 不規則で不安定
直感やひらめきに優れ想像力豊か |
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Pitta/ピッタ | 水と火のエネルギー | 熱、鋭、軽、液 | エネルギッシュで情熱的
リーダーシップ、完璧主義 |
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Kapha/カパ | 水のエネルギー | 冷、重、油、遅 | 落ち着いて安定している
愛情深く我慢強い |
1.ヴァータ(Vata)
空(Akasha/space)と風(Vayu/Air)のエネルギー
が結びつき、運動の作用を持つのがヴァータです。
• 元素: 空と風
• 特性: 軽い、冷たい、乾燥した、動きのある
• 役割: 動きや循環、神経系の機能を司る
• 不均衡時: 不安、不眠、便秘、関節痛などの問題が生じる
ヴァータの人は、風のようにフットワークが軽く、想像力が豊かで順応性があり理解が速いのが特徴。
身体的には、背がすごく高いかすごく低い(アンバランス)、乾燥しやすい、太りにくい等の特徴があります。
→→→ ヴァータをバランスさせるには
- 心身の休息を十分にとり、生活リズムを整える
- 入浴は湯船に浸かり、体を暖かく保つ
- 雨や雪で体を冷やさない、風に直接あたらない
- 温かく、油をある程度含んだ消化のよい食事をとる
- 不安や心配をせず、楽しいく過ごす
- オイルマッサージやアロマでリラックスする
2.ピッタ(Pitta)
火(Agni/Fire)と水(Jala/Water)のエネルギー
が結びつき、さまざまな物の形を変える変換の作用を持つのがピッタです。
• 元素: 火と少量の水
• 特性: 熱い、鋭い、軽い、油っぽい
• 役割: 代謝、消化、視覚の機能を司る
• 不均衡時: 怒り、消化不良、皮膚炎、発熱などの問題が生じる
ピッタの人の人は、頭の回転が速く機転がきき、計画的で、話し方も理路整然としています。
新しいことに取り組むのが得意で、負けず嫌い、すぐにカッとなったりイライラしたりしやすい傾向があります。
→→→ ピッタをバランスさせるには
- 休息を十分にとり、日中の暑い時間帯の活動は控える
- 消化のよい水分の多くて甘い液状の、メロンやスイカなどをとる
- 辛くて刺激のある食物は避ける
- 闘争的な事柄(テレビ、討論)を避け、穏やかさに触れる
- 満月を眺めたり、野山の自然に触れる
- 水泳などで熱した体を冷ます
3.カパ(Kapha)
水(Jala/Water)と土(Bhoomi/Earth)のエネルギーが
結びつき、骨格を形成するなどの構造の作用を持つのがカパです。
• 元素: 水と地
• 特性: 重い、冷たい、油っぽい、安定した
• 役割: 潤滑、構造、免疫の機能を司る
• 不均衡時: 怠惰、過体重、鬱、呼吸器系の問題が生じる
カパの人は生まれつきがっちりした体格で、行動がゆっくりと落ち着いています。持久力があり我慢強いのが特徴です。
シャイで人見知り、頑固で保守的なの傾向もあります。
→→→ カパをバランスさせるには
- 夕食を軽くして早めに就寝する
- 朝食も抜くか軽めにし、熱めのシャワーか入浴する
- 洗髪後はよく乾燥させる
- 体を冷やさないようにする
- 朝日を眺めながらの散歩や、運動をする習慣を身につける
- 食事はスパイシーで温かいもの、りんごや加熱していない蜂蜜をとる
- 冷たいものや油っぽい食物は避け、特に食べ過ぎは戒める
- 寝過ぎや昼寝をしないで日中は活動的に
- 朝は刺激性のアロマを部屋に満たすなど香りを楽しむ
これらのドーシャのバランスが整っていることで、私たちの心身の健康は保たれます。
自分のドーシャを知っているとセルフケアに活用できる
アーユルヴェーダでは、私たちの体質や気質を「ドーシャ」と呼ばれる3つのエネルギー(ヴァータ、ピッタ、カファ)によって分類します。これらのドーシャのバランスが整っていることで、私たちの心身の健康な状態は保たれています。
体質チェックを通じて、自分のベストバランスとバランスが崩れた時の対処法を知っていると、セルフケアで今なにをすべきかが体感としてわかるようになります。病気になる前の未病の段階で不調に気づきやすくなり、自分自身で心身の不調を整えられる予防医学を実践できるメリットがあります。
また、自分のドーシャを理解することは、インド占星術と組み合わせることで、人生の様々な局面での対応力を高めることができます。
例えば、占星術の観点から不運な時期を乗り越えるためのアドバイスを得るとともに、アーユルヴェーダの知識を活用して心身のバランスを整えることで、その時期をより穏やかに過ごすことができます。
さらに、自分と同じドーシャタイプや異なるタイプの人々の感じ方や考え方、行動の仕方にそれぞれ特徴があることを理解できたら、人づきあいを円滑にするのに役立つ場合があります。ドーシャの視点から人間関係を見直すことで、相互理解が深まり、コミュニケーションが円滑になるでしょう。
アーユルヴェーダ パンチャカルマ体験記
私がアーユルヴェーダを日々実践することになったきっかけは、インドの病院に入院して治療を受けたら、それまで何をやってもつらかった症状が劇的に改善したことです。
長年悩んでいた偏頭痛が完治(2012年)
某大手企業の会社員としてITを使った業務改革の分野で長年働いてきましたが、頑張りすぎたせいなのか、毎日のように偏頭痛に悩まされるようになりました。薬を飲んでも改善されず、ついには電車に乗るのもつらくなり、休職せざるを得ない状況にまで悪化しました。
昔から興味のあったインド5000年の伝承医学、アーユルヴェーダなら何とかなるかも!?と、突然ひらめき、何かに導かれるようにしてインド行きの航空券を購入。単身で南インドのケララ州にあるアーユルヴェーダ病院へ向かいました。
約1か月の滞在中、毎日アビアンガ、シロダーラ、ナスヤといったトリートメントを受けました。さらに、ヨーガも実践し、心身ともにリラックスしていくのを実感しました。アーユルヴェーダの治療とヨーガの組み合わせにより、偏頭痛の症状が次第に改善されていきました。インド滞在中は明るく元気に過ごすことができ、帰国してからも天候の変化による頭痛はありますが、以前のようなひどい偏頭痛の症状は一度も出ていません。
また、インド占星術のホロスコープを見ても、偏頭痛とは今後も付き合っていく特徴として表れています。そのため、症状が出たときの過ごし方やセルフケアに気をつけることで、以前よりも快適な日々を送れるようになりました。
帰国後もアーユルヴェーダを実践できるよう、セラピストコースを受講し、学びました。これにより、自分自身だけでなく他の人々にもアーユルヴェーダの知識と治療法を提供できるようになりました。この体験を通じて、アーユルヴェーダの素晴らしさと、インド占星術が私の人生に与える影響を実感しました。心身のバランスを整え、自分自身を深く理解することで、より健やかで充実した生活を送ることができるようになったのです。
日々の生活に無理なくアーユルヴェーダの教えを取り入れていることが、健康を保つ秘訣なんじゃないかと思うようになり、現在でもゆる〜く(ガチ勢ではなく)継続しています。
交通事故によるむちうちの後遺症が完治(2019年)
2019年1月末、バイクに乗車中の信号待ちで軽自動車に後ろから追突されました。幸い転倒もせず大怪我はなかったのですが、転倒しないように踏ん張ったため、首から肩にかけての筋肉が損傷し、いわゆるムチウチ状態になってしまいました。
半年ほど整形外科に通って治療を受け、ある程度は回復したものの、痛みで以前のように重い望遠レンズを構えることができず、天候によっては肩や首のあたりに重苦しい鈍い痛みが発生し、違和感がなかなか取れずに気分も沈む…という状態が続いていました。「このまま一生この後遺症と付き合っていくのか?」とぼんやり思っていたとき、もしかしたらアーユルヴェーダなら改善するかも?という考えが浮かびました。
今回は、南インドのリゾートに近い滞在型の治療プログラム(ドクターによる診察とセラピストによるトリートメント)を受けることにしました。入院ではないため、ヒンドゥー教の寺院を参拝したり、街へ出てサリーを買ったり、観光を楽しみながら、アビアンガやシロダーラなどのトリートメントを1週間ほど受けました。
結果として、首や肩の痛みが劇的に改善され、重い望遠レンズを構えることが再び可能になりました。天候による痛みや違和感もほとんど感じなくなり、重苦しい鈍い痛みがスッキリ取れたことに感動しました。
前回インドに来たときの偏頭痛がスッキリ治ったことといい、今回もムチウチの痛みが治ったことといい、アーユルヴェーダの驚異的な力を再確認し、この伝統を伝え守ってくれている人たちへ感謝の気持ちが込み上げてきました。
今後は年に一度の健康診断的な感じで、アーユルヴェーダのパンチャカルマを受けて健康維持ができたらいいなと思っています。
定期的にパンチャカルマを受け、日々の入浴の仕方で健康を維持する
アーユルヴェーダを体験してよかった点は、心身のバランスが整うことで、健康を取り戻すだけでなく、日常生活の質が向上することでした。さらに、インド占星術を通じて自分自身を深く理解することができ、セルフケアの方法を学びました。
近年、コロナ禍でインドへの渡航が制限されるようになり、国内での温泉療法や湯治生活を始めてみました。
すると、予想以上に花粉症や黄砂アレルギーの酷い症状が改善され、日本古来の湯治文化の良さを再発見することができました。温泉療法は、アーユルヴェーダと同様に心身の調和を図り、自然の力を利用して健康を維持する優れた方法であることを体感しました。
健康診断や人間ドックの感覚で、できれば毎年、難しければ2年に1回の間隔でパンチャカルマを受けることで、無理なく健康を維持できるのではないかと考えています。アーユルヴェーダと湯治文化を組み合わせることで、より豊かで健康な生活を送ることができると実感しています。
温泉療法は確定申告で医療費控除の対象になります。インド伝統医学のアーユルヴェーダもいいけれど、日本が誇る湯治文化ももっと活用されてもいいのではないかと思います。